強引な次期社長の熱烈プロポーズ


昼になり、百合香が休憩の時間になると、柳瀬が久々に売場に顔を出して百合香と交代してくれた。

「ごめんな。明日からいないからやること多くて」
「いえ、今日は比較的落ち着いてますし、長谷川さんも湯川さんもいますから」

カウンターに二人きりでそんな会話をする。
だけどどこか元気がない百合香に柳瀬は気がつく。

「なんかあった?」
「えっ?いや…何も」
「『何も』って顔してないよ」
「···そんなに顔に出てます?私」

(隠し事をしたい訳じゃないけれど、これから先、こんなすぐに勘づかれて心配させてたらダメだ。)

百合香はそう思って表情を作り直す。
その始終を見た柳瀬はさっきの質問に答えた。

「俺の前でだけだよ」
「えっ。よりによって…」

つい本音が口から出てしまった。
柳瀬に心配掛けないようにならなきゃいけないのにその逆のことをしている、と。


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