強引な次期社長の熱烈プロポーズ
「まあまあ。こんな立派なペンは勿体ないわ」
「いえ、是非試し書きをどうぞ」

丁重に断る女性に美雪は万年筆を差し出した。

「じゃあ少しだけ」

女性が折れて、差し出された万年筆を手に取り、くるくるとペンを走らす。

「文字を書かれたほうがもっとわかりますよ」

美雪はにこやかに、はきはきとそう言うと、女性の手元をずっと見ていた。
百合香がいよいよ二人の間に入ろうとした時に、バイトの長谷川が美雪を呼んだ。

「阿部さん!このペン、廃盤ですか?お客様に聞かれて…」
「え?わかりました、今行きます」

申し訳ありません、と女性に会釈をして美雪は長谷川の元へ足早に向かって行った。

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