強引な次期社長の熱烈プロポーズ
ソファに再び腰を落として彼女の声がする受話器に集中する。

「寝てなかったの」
『あっ…はい…なんとなく。智さんは今大丈夫でしたか?』
「ああ、何かあった?」
『····声が、聞きたくて』


――――今すぐに抱き締めたい。
抱き締めて、そしたらその唇を塞いで体温を感じるのに。


せめて、と目を瞑って百合香を近くに感じると、会話に間が空き百合香から言葉を発した。

『すみません…そんなことで電話して』

「いや、嬉しかった」


まさか、電話をくれるなんて想像までしていなかったから。
俺が君を想うように、君も俺を想っていてくれているということが嬉しくて。
ずっと傍にいたい。傍にいて欲しい。
そんな風に思うのはきっと今までになかった感情。


『・・・本当に?』
「本当だよ」
『嘘じゃない?』
「嘘をついて何になるの」
『・・・よかった』

いつまでも不安がる君も、喜んでくれる君も、全部、受け入れて抱きしめたい。


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