強引な次期社長の熱烈プロポーズ
「なんとか1日目、何もなく終わりそうだね」
「はい。クレームとかなくて良かったです」
「変わったお客さんも来なかったしね」
「うちは専門店だけに、こだわった方がたまにいらっしゃいますもんね」

いつも通りの普通の会話に百合香はすっかり警戒心を忘れていた。

バイトの二人も先に上がって百合香と坂谷が閉店後の夕礼を軽い感じで終わらせて、エレベーターへと向かう。

(多分、1階よりも今日は早く終わったかな。
坂谷さんとの夕礼だったから早かったし。)

エレベーターは1階からではなく5階から降りてきたところを見ると、百合香の考えた通りだろう。


ガコン…

2階に止まり、行き先が上向きに切り替わって扉が開いた。
坂谷の後をついてエレベーターに乗って、5階に向かう。

「神野さんの好きな人ってどんな人?」
「えっ?!」
「だってどんな人か気になる」
「え、えぇと···」

百合香は警戒心を緩めていただけに動揺と混乱で考えが纏まらない。

「歳は?仕事は?」
「歳…は、上で。仕事…は……販売?」
「ははっ!なんで疑問形なの?」
「あ、いや。なんでですかね」

その間に5階に着くと、百合香はほっと胸を撫で下ろした。

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