強引な次期社長の熱烈プロポーズ
「百合香！」
「えっ？あ、桜井さん！」

百合香が事務所を俯きながら歩いていると、前から数人引き連れて綾が歩いてきた。

「今日そっち早いね！あ、柳瀬くんいないもんね！」
「そうなんです。夕礼テキトーで。そんなのバレたら怖いですけど」

百合香は冗談混じりに笑って綾に話すと、すぐに別れて事務所を出て、エレベーターへと向かった。


（今、桜井さんと会ったから、エレベーターは来てるはず。）


そう思って急ぎ足で向かうと思った通り、５階にエレベーターは待機していた。
百合香がボタンに手をかけ、古い扉が音を立ててゆっくりと開き始めた時に事務所の方から足音が聞こえてきた。

「あ、来てる？」

そう聞いて小走りで乗ってきたのはさっきまで一緒だった坂谷だった。
今度は坂谷がエレベーターの奥に乗って百合香がボタンの前に立つ。

百合香は会話が思い当たらず無言になっていた。
心の中ではひたすら早く１階に着くことを願って。

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