強引な次期社長の熱烈プロポーズ
ガコッ

（あぁ！着いた！）

百合香はわずかに笑顔になると、ボタンを押したまま坂谷が先に降りるのを待ってから自分も降りた。

裏口は当然一つ。

百合香は坂谷の後ろをついて行く形になる。

外に出て少し裏口からずれた所で百合香は坂谷に挨拶して別れようと呼び止める時だった。

「神野さん、ちょっといい？」

不意打ちのその誘いにどう断っていいかわからなくて目を泳がせて必死に頭の中を落ち着かせようとした。
坂谷は、ずっとこの時を待っていたかのように真剣な面持ちで、しかも手首まで握られているから逃げられない。

「あの、」
「やっぱりオレ、神野さんのことが…」

その言葉を遮るように百合香の電話が鳴った。
電話は鞄の中。

2人は鳴り響く携帯の着信音の中、ただ見つめ合ってお互いに出方を待っていた。
すると、坂谷が手を放して言った。

「どうぞ？」

百合香の鞄に視線をやってその場に立って待っていた。

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