強引な次期社長の熱烈プロポーズ
「今、坂谷さんと別れるところでした」

その言葉で坂谷は自分のことを知っている人物からの電話だと探るように百合香を見ていた。

「はい、はい。わかりました」

そうして電話を終えて坂谷にもう一度向き合った。


「今の…誰?オレのこと知ってるやつ?」


坂谷は不審そうに百合香に尋ねる。

“あるわけないけどまさか柳瀬さんとか…”

坂谷がすぐに浮かぶのが柳瀬というのが坂谷も普段からライバル視している証拠だろう。

「ええ。知ってますよ」

にっこり百合香が答えるとすぐ横の裏口から綾が駆けて出てきた。

「お待たせっ」
「そんなに待ってませんよ」

綾が百合香にそういって待ち合わせをしていた素振りをみせると、坂谷はさっきの電話が誰だったのかすぐに答えはわかった。

「坂谷くん!ごめんね!今日も“女子会”だから~なんか百合香に用あった?」
「いや、また今度でいいっす」

電話の主は綾だった。
そういって百合香の腕に絡みつく綾を見て、坂谷は仕方なく一人で帰っていった。


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