強引な次期社長の熱烈プロポーズ
美雪が先に乗り込むと、8階を押した。
時間も時間だからとても館内は静かだ。

「柳瀬さんはお酒が強いんですね」
「まあ、好きですから」
「飲める男性は素敵ですね。どうですか、飲み直しでも」

そういって8階に着いて柳瀬に、どうぞと手を差し出して先に降ろした。

「いや、遠慮しておきます」

そう言いながら美雪が先に歩く後をまたついて行く。
長い廊下を少し歩いて一部屋の前で美雪が立ち止った。

ピー…カチャン

オートロックの解錠音が聞こえると美雪が扉を開けた。
その部屋を覗くと自分のスーツケースが運ばれていて、ホッと一息をついた。

「ありがとう。じゃあ…」

一歩部屋に入って振り向き、美雪にキーを貰おうと手を差し出した時だった。

パタン、カシャン

扉が閉まりロック音が今度は静かな部屋に響いた。


「何、してるんですか」
「・・・荷物、確認しました?」

柳瀬が冷淡な口調で美雪に問うと、美雪は全く動じずに逆に柳瀬に質問返しをした。


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