強引な次期社長の熱烈プロポーズ
もう1歩、柳瀬は部屋に足を踏み入れた。
すると、死角になっていた自分の黒いスーツケースの奥に赤いスーツケースが並んでいた。
「・・・阿部さん。どういうこと?」
「部屋が、手違いでひとつだけになったと言われました」
柳瀬はわかっている。そんなことは嘘だ、と。そして美雪もまた嘘だ、と感づかれているのは承知の上だった。
「もしそうだったなら、チェックインの時に相談できただろう?」
「・・・別に構わないと思ったんです」
「君は、だろ?俺はいいとは言わない」
そう言って柳瀬が自分のスーツケースを手に取り部屋を出て行こうとした時だった。
「先程もいいましたけど、ここは人気があるんです」
「だから?」
「新しく一室取るのは出来ませんよ」
「だったら他へ行くよ」
「ここは山の上です。こんな深夜は緊急以外タクシーを手配してくれませんよ」
無理を言えばそんなのどうとでもなるだろう。
しかしこんな時間にスーツ姿でお酒の匂いをさせてる自分はタクシーにも断られそうだ。
「柳瀬さん」
そう言って美雪は柳瀬の背中に抱きついた。
すると、死角になっていた自分の黒いスーツケースの奥に赤いスーツケースが並んでいた。
「・・・阿部さん。どういうこと?」
「部屋が、手違いでひとつだけになったと言われました」
柳瀬はわかっている。そんなことは嘘だ、と。そして美雪もまた嘘だ、と感づかれているのは承知の上だった。
「もしそうだったなら、チェックインの時に相談できただろう?」
「・・・別に構わないと思ったんです」
「君は、だろ?俺はいいとは言わない」
そう言って柳瀬が自分のスーツケースを手に取り部屋を出て行こうとした時だった。
「先程もいいましたけど、ここは人気があるんです」
「だから?」
「新しく一室取るのは出来ませんよ」
「だったら他へ行くよ」
「ここは山の上です。こんな深夜は緊急以外タクシーを手配してくれませんよ」
無理を言えばそんなのどうとでもなるだろう。
しかしこんな時間にスーツ姿でお酒の匂いをさせてる自分はタクシーにも断られそうだ。
「柳瀬さん」
そう言って美雪は柳瀬の背中に抱きついた。