強引な次期社長の熱烈プロポーズ
受話器を耳に充てたまま、百合香が変な顔をしているから綾は口を開いた。


「なに？どうかした？」
「いえ、なんか、電波がないとこにいるみたいで…」
「ええ？イマドキそんなとこある？ていうかあるけどそんなとこに出張行ってないでしょ」
「あ。もしかして電源切ってるのかも。」
「何のために？」
「接待中だから、とか」


2人でなんで電話が通じないのか討論し始めた。
綾のいうことはもっともで、出張先の電波がないっていうことは考えにくい。だけど百合香の言う接待中に電源を切るというのは当たってはいた。

「こんな時間まで？」

綾の粗探し、とまではいかないがそんな鋭い突っ込みに返す言葉がない。
不安になってきた百合香の顔色を綾は読み取ってある提案をする。

「ホテルにかけちゃえば？」
「えっ」
「ホテルに掛ければ阿部さんが部屋にいるわけもないし、逆に安全だったりしない？」
「だけど、ホテル知らなくて…」


八方ふさがりだった。
そう思った瞬間すごくすごく不安が襲ってきた。

そこに綾がまたしても新たな提案をする。


< 317 / 610 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop