強引な次期社長の熱烈プロポーズ
「ご予算などはありますか?」
「1万以内で」
「男性ですか?女性ですか?ご年代は?」
「男性で、50ちょっとかな」


目の前にいるお客様相手でもなかなかすぐには“一本”を見つけてあげられない。
それが会ったことも見たこともない人への贈り物のペンとなると、抽象的情報で当たり障りのないお勧めの仕方しかできない。

あとは本人を知っているお客様が決断してくれるのを待つだけ。
だから逆に優柔不断なお客様だとずっとつきっきりになってしまうのだ。

ある程度、その条件に満たしそうなペンを5~6本トレーに乗せて差し出した。
その男はじっくりと一本一本確かめるように時間を掛けて吟味している。
自分の使うペンではないが、試し書きをする位だ。


「神野さんは、どれがいいと思います?」


そしてそんな質問をされる。百合香はどれもお勧めしたものだから悩んだ末に、少し軸が太めで光沢のあるブラックのペンを指した。


「50代位の方だと、この位貫禄があるペンの方がいいかもしれませんね」
「なるほど。」


そうしてまた男はしばらくペンとにらめっこを始める。


「神野さんて、お付き合いされてる方とかいらっしゃるんですか?」
「え?」


(どうして最近こんな質問ばっかり…
モテ期が本当にあるのなら学生の時に来てほしかった…)

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