強引な次期社長の熱烈プロポーズ
そして脳裏には柳瀬を思い浮かべる。
付き合ってる人は、いる。

その人は、今どこで何をしているのだろう…

少し間が空いてしまって、その男が不思議そうな顔をして自分を見ていたのに気がついて慌てて百合香は答える。


「あっ、いませ…」


ふと、近くに坂谷がいるのに気がついた。
おそらく気にして近くにいてくれたのだろう。だけど今は逆に近くにいることで、付き合っている人が“いる”と即答できなくなった。

百合香は不自然になりつつも続けて言った。


「…ん」

「え？そうなんですか。すごく素敵な方なのに」


男は動じないように見せているが、顔が綻んでいて明らかに嬉しそうだ。


「いえ、そんなことは……あの、どちらにしますか？」
「えっ？ああ！じゃあその黒いの。贈り物にしてください」
「かしこまりました。ありがとうございます」


なんとか話題をセーブして距離をとりたくて百合香が話を元に戻す。
お会計をする為にお客様をカウンターに残してレジに向かった。


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