強引な次期社長の熱烈プロポーズ
「申し訳ありません」

坂谷が深く頭を下げると、バツが悪くなったそのお客様はそそくさと階段へと消えて行った。

階段から完全に姿が見えなくなるまで坂谷はその姿勢のままだった。
そしてその姿勢のまま顔だけ百合香の方を見ると、ニカッと笑った。


「出しゃばっちゃった？」
「い、いえ。ありがとうございます」


くしゃっと笑うその笑顔はホッとさせてくれた。


「もうさすがにこないかな」
「お客様、減らしちゃいましたかね…」
「いいよいいよ！だって身の安全が第一でしょ」
「そんな…なにも起きてはいなかったですけどね…」


２人で階段の方を見ながら話をして、最後にプッと坂谷が笑った。


「ま、オレの自己満足だったかな」


そう言って坂谷はまた業務へと戻って行った。

（いつもはあのお客さんのように坂谷さんがしてくる癖に。）

そう心の中で思いながらも百合香はちょっと笑ってしまった。


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