強引な次期社長の熱烈プロポーズ


「坂谷さん、やっぱり払います」
「いいから。オレが無理やり付き合ってもらったんだから」
「でも…」


店の前で立って話していると、坂谷が『もうその話はおしまい』と歩きだした。

百合香も少し後ろをついて歩く。
駅までは20分位か。でも坂谷と百合香は違う路線だから途中で別れるのだけど。

あまり人通りのない道。
あと少し歩けば大通りに出て平日でも人はいる筈だ。

不意に坂谷が立ち止ると百合香も合わせて立ち止まる。

そして坂谷が百合香の方をゆっくりと振り向き見ると、先程のような雰囲気から一転して、真面目な面持ちになっていた。


「もう、伝わってると思うけど」
「····はい」
「どうしても諦められなくて。神野さんに好きな人いるって聞いても」
「ごめんなさい…」


百合香は俯き小さな声で謝った。
坂谷はそれでもなお、引き下がることをせずに百合香に問う。


「本当に、好きな人いるんだよね?」
「はい」
「それって、柳瀬さんじゃなくて?」
「えっ?」


(どうして柳瀬さんて言葉が出るんだろう。
やっぱり気付かれてるのかな?だとしたら嘘が全部ばれちゃって…どうしよう。)

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