強引な次期社長の熱烈プロポーズ
ここで学ぶのは万年筆の命ともいえるペン先の調整。
もちろんその前の工程も軽く習うが、機械や特殊な材料もいるのであまり店では活用できない。強いて言うなら、うんちくとしてお客様に会話で出せるくらいだろうか。


「柳瀬くん、ここから好きなの選んで。気にいるものがあればいいんだけど」


そういって金山は小箱を差し出した。
その中には万年筆の軸が色んな種類混ざって入っていた。
さらに小さなトレーを持ってきた金山はそれも柳瀬に差し出した。


「こっちはペン先ね。これも好きなの選んで」
「ありがとうございます・・・」


柳瀬にしては珍しく悩んでいた。
軸は希望しているものをすぐに見つけたからそれを手にしたが、ペン先に少し時間を要していた。


「・・・昨日の“桜”は細字だっけ?そしたら今回は太めのにしたら?」
「はい…いや、中細にします。」
「中細?はいよ」


金山はトレーからペン先の太さが中細の〈FM〉を柳瀬に渡して勉強会を始めた。



それからあっという間に昼の時間が来て、笹森の予告通りお好み焼きを応接室で平らげた後はまた金山の元で一日を過ごした。


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