強引な次期社長の熱烈プロポーズ
「じゃ、行くか」

そう言って柳瀬は前を歩く。
百合香は小走りで柳瀬の歩幅について行く。
エレベーターを待つ間は会話もなく、機械音だけが廊下に響く。


「あの…送って下さるって…」
「あぁ。車だよ。昨日江川と飲んで会社に車置きっぱなしで帰ったから。」


そう聞き終えるとちょうどエレベーターが到着し、扉が開いた。
柳瀬が先に乗り込み扉を開けて待っててくれる。百合香は後から乗ると、少し距離をおいて後方へ立った。


そしてまた２人の間には言葉はなく、エレベーターの動く音だけがこだまする。
百合香は柳瀬の後ろ姿を見て、つい昨日このエレベーター内でキスされたことを思い出して少し俯いた。


すると、

「…何考えてるか、あてようか？」

と、自分の肩越しにちらりと視線を送り、含み笑いで言った柳瀬に、

「だ、大丈夫です!!」

とだけ答えた。

< 36 / 610 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop