強引な次期社長の熱烈プロポーズ
ふっ、と今まできつく抱き締めてくれていた手が急に緩まった。


智さんの距離が離れてしまう――――

不意にそう思ったら焦った百合香は振り向き柳瀬と向き合った。

柳瀬の瞳は相変わらずいつもと同じで百合香を真っ直ぐに映して揺らがない。
そう。いつでも、貴方のその瞳に吸い込まれて、溺れさせられる。


「悪いけど、俺は君を離さないよ」



彼が大人で良かった。
だってこんな子どもみたいな自分を上手に扱って、理解して。手を離さないでいてくれる包容力に何度でも救われてるんだから。


「好きですっ···私を嫌いにならないで··」

「今言ったの聞いてなかったの?」


初めて、自分から彼を抱き締めた。


「離さないって言ったのに」


きっと私、酷い顔。
嫉妬とか意地とかそんなのが色々混じって涙も止まらなくて…
顔、あげたくないな。


そう思ってずっと柳瀬の胸に顔を埋めてた。

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