強引な次期社長の熱烈プロポーズ

1.Satoshi's Side3



「おはようございます」
「おー…3日間、お疲れ」
「いえ…」


柳瀬と坂谷の一見通常通りの挨拶。
二人の心中は違っていたが。

坂谷はいつものような覇気がなく、淡々と朝の準備を始めていた。
途中できたバイト2人とは笑いながら話をしているから元気はあるのだろう。

自分も3日間不在で溜まってる仕事がある。

柳瀬はとりあえずいつものホワイトボードをチェックした後に、発注ファイルを開いた。


「…お?」


(蒔絵が売れてる…。
この注文書の字は、百合香だ。

まあ、プライベートまで仕事の話なんかしなくてもいいんだが、一言もこんなこと言ってなかったな。多分、昨日はそれどころじゃなかったんだな·····それは俺もか。)


一人その注文書を見つめて笑いたい衝動を堪える。
すると次にレジチェックの為に柳瀬の近くに坂谷がやってきた。

坂谷も、本当は柳瀬のことなんか気にしている自分が嫌だと思いながらも、意識と視線が柳瀬に行ってしまう。


「それ、昨日神野さんが受けてましたよ」
「珍しいものが売れたもんだ」
「週明けには入荷するみたいです」
「在庫あって良かったな」


蒔絵は特に、欠品だと次がいつになるかわからない。
今回は国内製だからまだいいが、舶来品の商品になると数ヶ月、時に1年位待つのはザラだ。


そんな会話を少ししてからすぐ朝礼になった。
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