強引な次期社長の熱烈プロポーズ
開店して、5分が過ぎたら坂谷に任せてバックヤードに籠って仕事をする。

7日後に迫るフェアの追い込みと、通常業務と。

早速今日美雪が試作品を預かって持ってくる話だったが…さて。どんな顔をしてくるのか。
俺には全く関係ないが、とりあえず今日百合香が休みでよかったと思う。
勿論それは百合香の心を配慮して。


パソコンに向き合ってそんなことを考えていると後ろからヒールの音がした。


「おはようございます」


(さすが。)

表情も声も、いつも通りで柳瀬に接してきたのは美雪だ。


「おはようございます。昨日までお世話になりまして」
「いいえ。こちらこそ。金山や七重もとても楽しく過ごさせてもらったと言っていましたから。それで、早速なのですが」


美雪は持っていた鞄からガサゴソと箱を取り出して開けて見せた。

中からは赤·青·黄·黒·白の5色のボディをした万年筆。
大きさは手帳の幅に収まるくらいのコンパクトなものだ。


「この前お話してました、試作品です。ほぼ決まりだと伺ってますが」

手にとってキャップを回す。
男の自分の手だとすっぽり収まってしまうが携帯用だと思えばこんなものだし、何より女性に指示を受けられそうだ。


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