強引な次期社長の熱烈プロポーズ
「おはよう」
「え…?あ!」


売場へ行くと美雪は坂谷が目に入って声を掛けた。


「阿部さん!いらしてたんですか」
「もうすぐイベントですもの。売上の為なら足しげく通うわ」


美雪の態度は柳瀬に対してとは違う、少し不機嫌な対応だ。
坂谷はそれを感じとる。


「うまく…いかなかったみたいですね?」
「人のことはいいのよ…坂谷くんも、結果は散々だったんでしょう?」
「オレはまだ···」
「まぁ、ただ黙って身を引くのは面白くないわ」


坂谷は最後の意味深な言葉が引っ掛かる。
美人で頭が切れるだけに、何を考えているのかわからなくて恐怖感すら感じた。


「阿部さん···?」
「それでは、私1階から先に品出ししてきますので」


カツン、と踵を鳴らして身を翻すと、また高いヒールをコツコツ鳴らして階段を降りて行ってしまった。

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