強引な次期社長の熱烈プロポーズ
ほんの一呼吸の間をおいて、先に口を開いたのは美雪だった。


「ごめんなさい」


美人の美雪が美しいお辞儀をして容姿端麗な柳瀬に謝っているものだから、通行人が皆二人を見ながら歩いて行く。


「軽率でした。お客様にもご迷惑を掛けて···」
「謝る相手は俺じゃないでしょう?」
「···蒔絵はどうなりましたか?」
「来週中にはお客様にお渡し出来そうですよ」


柳瀬が一言そう言うと、美雪はなんだかんだ言ってホッとしたような顔をしていた。

(元々優秀な人だ。多分もうこんな馬鹿な真似はしないだろう。)


「ではまた明日伺いますので」
「はい。宜しくお願いします。ああ、阿部さん」
「はい?」
「社にメールはしてますが、恐らく明日、打ち入りしますから笹森さんや他の方にも知らせておいて下さい。」


美雪は短く返事を返して相変わらずヒールを鳴らして去って行った。
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