強引な次期社長の熱烈プロポーズ
「坂谷のいう、『一つくらい』ってのが彼女以外なら考えるけど」

「え?」

「彼女だけは渡せないよ」


こんな恥ずかしい位の言葉を、誰かに言っているところに立ち会っている私は幸か不幸か。

嬉しいけれど、坂谷がいるから何も反応が出来ずにいる。
だったら聞こえないところで言って欲しかったかも、なんてほんの少し思っては2人の行方を見届ける。


「はー…そりゃそうですよね。まぁそこで譲るって言われても怒ってましたけど」


脱力して笑いながら坂谷はそう言うと、『残り時間ヤケ飲みします』と店に戻って行った。

坂谷が店内に消えて行ったのを見届けてから百合香が掌を差し出した。


「あ・・智さん、これ」

「ああ。きっと坂谷が君について行くと思ったから。そしたら他に誰もいないとこで話出来るだろう」


それはさっきのメモ。

【店の外に出てて】

そうブルーブラックのインクで書かれてあった。

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