強引な次期社長の熱烈プロポーズ
「神野さんて、結構強か《したたか》ね」

「えっ?」


挨拶以外に話しかけられるなんて思ってもいなかったから動揺してしまう。
だけどそんなこと構わずに美雪は言葉をつづけてた。


「ちょっと突いたら、一気に崩れてしまいそうな感じがしたけど」
「・・・」
「弱そうに見えて、しっかり立っているんだもの。参っちゃうわ」
「・・・全然平気な訳じゃないです」


美雪が壁にもたれて腕を組む。
百合香は半分体を美雪に向けて、視線はまっすぐ目を見つめる。


「神野さんが知らないのか、それとも気付いていて知らないふりをしているのか・・・」
「・・・何の話ですか」
「半月前の“蒔絵”よ」


そう。百合香はあの時のミスは自分のミスだと受け止めてきた。

だけど、やっぱりどこかで引っかかってはいた。

“オーシャン”の蒔絵だったから、まさか…と。

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