強引な次期社長の熱烈プロポーズ
「百合香、はめてみて」


柳瀬にそう言われて、店員にも見守られる中で百合香はそのトレーへと手を伸ばした。

震える手を必死に隠して、右手の親指と人差し指だけで慎重に持つと、今度は左手へと近づける。


「サイズはどうでしょうか?」
「あ、はい…ぴったりです」


店員のにこやかな問いかけに、百合香はにこりともせずに答えた。


「よかったです。もしもお直しが必要でしたら2回までは無料ですのでこちらに添えてます紙と一緒にお持ちくださいませ」


流暢に説明をされているけど、百合香の頭の中には届かなくて、ただひたすら驚きが回り続けていた。


「そのままつけていかれますか?」
「え?」
「このままでいいです」


そして最後まで抜け殻な返事しかしない百合香に代わって柳瀬はそう答えると、小さな黒い紙袋になにやら小さな箱とノートより小さめのファイルのようなものを一緒に入れて手渡された。

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