強引な次期社長の熱烈プロポーズ

ソファに浅く腰をかけた。膝に握り締めた手を置いて、すぐ膝がつきそうな距離のテーブルを眺める。
その態勢から１ミリも動けない。
下手したら息すらうまく出来てるかどうか。


静かな部屋に唯一聞こえるのは掛け時計の秒針の音。
カチカチカチ、と響くその音は、これから始まる憂鬱な時間へのカウントダウンにも聞こえて耳を塞ぎたくなる。

現実にはたった１、２分だっただろう。
けれどそれは百合香にとって１０分にも２０分にも感じる程の沈黙だった。

そして、いよいよ百合香の心が限界を感じ始めた時に、柳瀬が重い口を開いた。


「さっきのは、江川が言ってたことだろう？」


百合香は静寂な室内に響いた低く艶っぽい声に肩をあげて驚いたけど、柳瀬の方を見ることが出来ずにずっと視線はテーブルにあった。

そして視界ギリギリに入る柳瀬も恐らく顔は同じ方向を向いたままだ。


「きっと、昨日だけじゃないんだろう。何を聞いたの？」

「···前にも同じようなことを」

「同じようなこと？」