強引な次期社長の熱烈プロポーズ

あの年の夏―――あの日から約２カ月後に柳瀬は異動命令が出た。


それは百合香との関係が関わっているかはわからなかったけれど、遅かれ早かれどちらかが異動になると話はしていたから、覚悟は出来ていた。

しかし、やはりあまりに急で、しばらく百合香は放心していたのだけれど···





「じゃあ私は今日はこれで。柳瀬さんにもよろしく」


美雪は冷やかしの意味も込めてそう百合香に挨拶をすると階段に向かっていってしまった。


「阿部さんて、やっぱり素敵な人ですね」


後ろ姿がかっこいい仕事の出来る女性で百合香はホーッと溜め息混じりに呟いた。


「まあ、確かにね。でも神野さんは神野さんなんだし」


坂谷は優しくフォローすると、抱えていた仕事の続きを始めてどこかへいなくなってしまった。