強引な次期社長の熱烈プロポーズ
「じ、事情って···?」
「もう時効だから、いいかな」


百合香にはなんのことかさっぱりわからなかった。
どんな事情かわからないが、それを今まで柳瀬は微塵も感じさせなかった。

とりあえず百合香は開店までの残りの数分を黙って話を聞くことにした。


「本当は、君が候補だったんだ。本社はね。」


あまりに衝撃の一言は、驚きのあまり声も出せなかった。
そんなことは当時も聞かされてなかったし、1年経つ今の今まで全く耳に入らなかった話だ。


「俺が上司だったとき君がまだここの仕事に専念したそうだったし、阿部さんからも次期出張候補で推してくれてたし」
「あ、阿部さん…?」


さらには直接人事に関係のない阿部さんの名まで出てきてさらに混乱をしてしまう。


「そして今年、阿部さんと一緒に君が広島に行った。その成果なのか最近また、接客も好感触みたいだね。店長や坂谷から聞いたよ」

「ちょ··ちょっと待って···」


(て言うことは、今、私がここにこうして立っていられるのは智さんや店長、阿部さんのおかげってこと?)

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