強引な次期社長の熱烈プロポーズ
「な、何も知らないで私···」
「そうやって気にするから言わなかった」
「そりゃ···!」
「本社に行くのは別に百合香じゃなきゃだめだったわけでもないし」


真っ直ぐに向き合う彼の顔は窓からの柔らかな光を浴びてより一層笑顔と綺麗な瞳を印象づける。


「みんなが百合香に期待をしていたんだ。そして君はそれに頑張って応えている。それだけで充分なんじゃないか?」


磨かれた皮靴が静かに音を立てて百合香にまた近づいた。


「でもまさか、こんなに早くにまた一緒に働けるとは俺も思わなかったけど」


柳瀬は口元に薄ら笑みを浮かべながら落ち着いた声で言うと、腕時計を伏し目がちに見た。

(そうだ、もう開店時間になってしまう―――)

そう思って顔を上げた時だった。


「ちゃんと、期日内に提出できる?」


ふわっと抱きしめられてそう耳元で言われると、心臓が飛び上がってしまって思考回路がまともに機能しない。

だけど、その状況で必死に今の言葉とさっきのメモを思い出して考える。


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