強引な次期社長の熱烈プロポーズ
前編
「智さんって兄弟いました?」
無事入籍は済ませたものの、お互いの両親に挨拶をしただけで未だ“両家顔合わせ”なるものをしていなかった2人は順序が違ってしまったが、2日後の日曜日に都内の料亭で会食することになっていた。
「ああ…言ってなかったか」
2人の新居はそのままの智のマンション。
今は仕事を終えて帰宅し、夕食も済ませてのんびり2人で寛ぐ時間だった。
ソファに深く腰を掛けて本を眺めている智にキッチンの片づけを終えた百合香が隣に座る。
「弟さんか、妹さん?」
百合香にとって頼りがいのある智は、兄弟がいるならば家族構成でもきっと長兄に当たるだろうと考えての予想だった。
“当たっている?”と目を輝かせて覗きこむ百合香に智はぼそりと答えた。
「いや、姉貴···」