強引な次期社長の熱烈プロポーズ
黒い光沢のあるテーブルに、見える景色は立派な庭園。
向かい合って座ると目の前にいるのは智ではあるが、やはり2人きりではないので百合香も今更ながらすごく緊張していた。

しかし百合香が気になるのは智側の席の空席――


「では飲み物が揃う前に簡単にご紹介させて頂きます」


智がその場を取り仕切ると、順に家族の紹介を始めた。


「父の柳瀬英治、母、弥生。それと―――」


智が言葉を続けようとした時だった。


「すっすみません!!」
「遅れてしまいました!!」


静粛な雰囲気を壊すかのような登場をしたのは2人の女性。
襖に手を掛けながら立っていて、息をあげながら敷居を跨いだ。


「こら!!バカモノ!!こんな日に遅刻するやつがあるか!」

「······」


すぐさま立ちあがり、娘二人に説教を始める英治を弥生が『落ち着いて下さい』と窘める。
智はやや呆れ気味に姉たちの方向を見ていた。

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