強引な次期社長の熱烈プロポーズ
百合香の口が動く前に智がその唇を塞ぐ――


「んっ」


いつも突然されるキス。
だけどそれも百合香は嫌じゃなくて、自らもまた唇を重ね合わせる。
唇から伝わる感触で胸が締め付けられて何度も恋をする、ひとつの魔法のようなもの――

ドキドキとした感情は、ゆっくりと開けた百合香の目を潤ませていた。


「やっぱり、そんなことない」
「『そんなことない』ってなに?」
「あ···」

(椿のばかっ)


百合香は頭の中で今日椿が言っていた『感情の起伏がない』という言葉に反論してしまっていたのである。

少し距離を置いた百合香にゆらりと近づく智は逃がしてくれる筈もなく―――








「――椿くんが?」

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