強引な次期社長の熱烈プロポーズ

「昨日百合香から聞いたばかりなんだけど」


その飾られた花を見たまま百合香を思い出す様に優しく微笑んで智は続ける。


「百合香の名前は誕生月から取ったんだって」
「ああ、はい知ってます」
「···椿くんもそうなんだって？」


コンプレックスの椿という名前。
それは両親が百合香と同じように産まれ月からとった誕生花の名だったと百合香は昨夜智に話をしていた。


『ユリの花言葉はね―――』


「ユリの花言葉が“純潔·無垢”―――百合香にぴったりだと思って笑っちゃたよ」


こんなバーのカウンターで３０代の男が恥ずかしげもなく花言葉なんかを語るんだから普通なら引いてしまうところだろう。
しかし椿から見ても智はやっぱり魅力的な男性で、真面目に花の話をしていても決しておかしくも痛くもなく、同性ながらも智に見惚れてしまう位だった。