強引な次期社長の熱烈プロポーズ
「まぁ、色々と」
そう言って誤魔化すとキッチンへと向かってグラスに水を注いで飲んだ。
百合香は両頬に空気をたくさん入れてこの上ないふくれっ面を披露すると、智は水をテーブルに置いて笑いながら百合香に近づき抱きしめた。
「···そうやってはぐらかす!」
「それより、百合香はどうだったの?坂谷に絡まれてない?酔ったらアイツわかんないから」
「もう!そんなのないですよ!」
「どうだか」
(出た!智さんの意地悪い笑い!)
椿との話は特に口止めされていた訳ではないが、元々百合香のいない席を設けた時点で暗黙の了解と、智は何も言わなかった。
初めは百合香の言うとおり、はぐらかす為の手段で抱きしめたのだが、やはり百合香に関しては冷静でいられなくて。
「んっ··」
「···本当いつまでも無垢な感じが俺を狂わすな」
唇を重ねて百合香が頬を赤く染め、小さく震えて智のシャツを握る手を見て智はそう言うと自分のネクタイを緩めるのだった。