強引な次期社長の熱烈プロポーズ
バットを下ろして土につけると、智の背中をネット越しに見て椿は言った。


「義兄さんは、“結婚”躊躇わなかったですか?」


その質問と同時に智のバッターボックスにボールが飛んできたが、智はそれをバットを振ることなく見逃した。


「それだけ、聞いてから連絡しようと思って・・・」


智はバットを持つ手を緩めて肩に乗せた。
視線は変わらずピッチングマシーンの方向だが、打つ気配は感じられない。


「それを聞いたら、椿くんの考えは変わるの?」
「え・・・」
「俺の話を聞いても聞かなくても答えは出てるんだろう?」


そう言われて椿は何も言えなかった。
智はまたバットを肩から浮かせて構え、再び気持ちのいいヒットを打った。


「そうですよね。自分は自分ですよね」
「・・・」
「オレ、行きます!」


そう言って椿が上着を手にとってドアをくぐろうとした時だった。


「俺は百合香相手に躊躇うことなんかなかったよ」



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