強引な次期社長の熱烈プロポーズ
今時珍しい真っ黒な長い髪で、だけど少しも暗い印象を受けなかったのは今の笑顔のせいだろうか。

若いのに、こんなところに買い物にくるなんて、頼まれものか、それともそういう趣味なのか···。

俺が勝手にその子の想像を頭の中で繰り広げていると、その子は下ろしているその黒髪を片手で抑えながらゆっくりとショーケースを見ながらぐるりと回り始めた。


万年筆担当になって1年。
それなりの接客は出来るようになったと思う。

それにお客さんは大体年配の人が多いから、ゆったりとした接客が出来るし、穏やかな雰囲気の人が多いから特に焦ったりすることもなくやり過ごしていた。

知識は豊富かと問われれば実はまだ全然そこまでには至らないが、基礎的なことや万年筆の魅力位なら俺にも伝えられる。


その子が1周した時にまた目が合った。


そろそろ声を掛けてみようか―――


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