強引な次期社長の熱烈プロポーズ
「この中から選びます」


俺が数本セレクトしたものをペントレーに乗せて出したものをキラキラした瞳で見ると、その子はそう言った。

ひとつはマーブル調の軸に金のリング。色は深みのあるワインレッド。
もうひとつは光沢がある薄紅色の軸で、ラインが綺麗な一本。
最後はパールがかった白いボディのシルバーのリング。


彼女は一本一本を大事そうに手にとって微笑みながら感触を確かめる。


ペンを選んで行くお客さんには二通りいて、インスピレーションで即決して行くタイプと、迷いに迷って決めるタイプ。
後者は1日で決まらず数日にわたって決め兼ねる人もいる位だ。

そして正直そのタイプだと、だんだんとこちらが疲れてきてしまうのも事実だ。

悪く言っているつもりはない。

ただ、もうこれ以上なにも手伝いが出来ないところまでいっていて、後は本人の決断しかない、という時に長らく悩まれるとこちらもどうしていいかわからない。


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