強引な次期社長の熱烈プロポーズ
俺は引き出しという引き出しを開けては締めて、ペンで溢れ返ったその中を必死で掻き分けながら探した。

展示されている場所もくまなく探した。


細字の在庫が、ない。


あれだけ勧めておいて、ありませんでした。というのはありえない。
大失態だ。初めから確認するべきだった。
下手すればお客さんの時間を無駄にしたのだからクレームものだ。


俺は恐る恐る満足そうに待っている彼女のいる場所まで歩いて行く。


「···申し訳ありません!」

「えっ??」

「お勧めしておきながら、在庫の確認をせず···只今細字が··」

「在庫がないってことですか?」


その子の笑顔が消えてしまったと想像した俺は、あろうことか目も見ずに、ただショーケースを見つめて頭を下げた。


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