強引な次期社長の熱烈プロポーズ
1枚の承り書を持ってきて、その子の前で内容をメモする。
よりによってさっきまであった筈のボールペンが見つからない。

こんなに数えきれない位のペンに囲まれているのに、いざ使おうとしてるときに自分のペンがなくて困るなんて笑ってしまう。

とりあえず、メモ書きだけと思って、唯一ポケットに刺さっていた万年筆を手に取った。


細字···取り寄せ···ギフト用、と。


閉店まであと5分を切った。
手早く字を書いていると、いつものお客さん以上に、前に立って居るその子の視線を感じられて、不意に顔を上げた。


すると、その彼女は恍惚の表情をしてこっちを見ている。

その顔に目を奪われて、俺は書く内容も、書くこと自体も忘れて固まってしまっていた。





「素敵な万年筆ですね。すごく似合ってて貴方の為のペンみたい」




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