強引な次期社長の熱烈プロポーズ
「それでは、入荷しましたら御連絡さしあげますので」

「はい。よろしくお願いします」

「ありがとうございました。またお越しくださいませ」


俺は承り書の控えを渡して深くお辞儀をして彼女を見送った。
いつもより少し長めに頭を下げていた筈だったのに···



「··私もいつか自分の万年筆を買いにきますね」



頭を上げると、少し歩き進めたところで立ち止まって俺の方を見ていた彼女が最高の笑顔でそう言って、背を向けて去って行ってしまった。



閉店の音楽が鳴り始めた。

ふと、手元の承り書を見る。



「神野―――百合香···」



次に来る時俺は会えるだろうか――――。

< 579 / 610 >

この作品をシェア

pagetop