強引な次期社長の熱烈プロポーズ


「なに?」


新幹線で並んで座る智を物珍しそうに百合香が見る。
自分は窓際に座っている癖に、乗車して約10分経つがかれこれずっと見つめていた。


「あっ。いや、その…新幹線の隣に、智さん…」
「ああ、雪道が心配で車ちょっと自信なくて。ごめんな」
「や!そうじゃなくて!いつも一人で座って帰ってたから···」


まさか自分に彼氏が出来て、しかももうその人は夫で。
実家に一緒に帰るだなんて、想像してなかった。


「たまに公共の乗り物も悪くない」


さりげなく智は百合香の手を握る。それはいつも車では出来ないことで、百合香はまた恥ずかしくも嬉しくなった。


「あっ、ちゃんと、迎えに来てくれるって言ってたから大丈夫です」
「お父さん?」
「あ、どうかな。お母さんかも」


そんな会話をしながらあっという間に長野駅に到着した。

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