強引な次期社長の熱烈プロポーズ
斜面の下側にいた百合香は智の体に巻き込まれて2人で仲良く雪面に尻もちをついた。
「···悪い」
バツが悪そうに智がぼそっと百合香に言った。
百合香はそんな智を丸い目をして見つめると、次の瞬間吹き出した。
「··っふふ!あはは!」
そんな百合香を見て智は少し不貞腐れたように普段言わないようなことを百合香に言った。
「―――起こして」
そんな風に自分に頼られるようなことは今までなかったから。
“助けて”といった目を向けられるのがなんだかくすぐったくて、嬉しくて。
新しい智を発見した、と心の中でドキドキが収まらなかった。
「はい」
ひとしきり笑った後、まずは自分の体を起こし、それから智に手を差し伸べる。
「斜面と逆の方に重心をかけて、板は平行になるように」
そう言って手を取り合った2人はもう一度、仲良く雪に転がるのだった。