強引な次期社長の熱烈プロポーズ
朝礼が終わると開店まであと15分といったところだ。


「百合香休憩何時予定?」
「ええと…多分12時半だと…」


了解!とだけ言って綾は階段で1階へと下って行った。


(きっと昨日の飲み会の話を聞きたいだけだな。)


百合香はそんなことを考えると、ふとまた昨夜のことを思い出した。


百合香はさっきの続きの硝子を磨き始めた。
ショーケースの硝子越しに、柳瀬と同じ万年筆を見つけ、ドキッとする。

別に何かあったなんてこれっぽっちも思ってる訳ではないのだが、あの柳瀬と二人きりで…自分は何かしたりしてないだろうか。
酔っていて二人きりの気まずさは全く覚えていないが、逆に覚えていない間にどんな会話をしたのか。どうやってうちへ辿り着いたのか。
気になるけれど、怖くて聞けないでいた。


「手、止まってるけど。」


百合香が不意に顔を上げると柳瀬が立っていた。

百合香が立っていても首が痛くなるほどの身長差。
百合香は160センチなく、柳瀬は180手前位と言ったところ。


「あ…すみません…」


百合香はすぐに視線を硝子に戻し、ガラスクリーナーを吹きかけた。



< 6 / 610 >

この作品をシェア

pagetop