強引な次期社長の熱烈プロポーズ
＊

「柳瀬さんも、今日は車じゃないんですから飲んでください」
「それはいいけど、ちょっと飲みすぎじゃないか？」
「私ですか？！大丈夫ですよー」

あれから数時間が経って、百合香はなんだかお酒の力なのか陽気になってしまって、つい得意でもない日本酒なんかにも手を出してしまっていた。

「もうやめとけ」
「えーやです」

柳瀬がひとつ溜め息をつく。
すると酔った百合香が勢いで話し始める。


「あ！また溜め息つきましたね？幸せ逃げちゃいますよー」
「この状況にいたら溜め息も出るだろう」
「…柳瀬さんはいつも、私に溜め息ついてますよね…」


急に百合香のトーンが下がった。
柳瀬も驚いて百合香を見ている。


「私がトロくて、苛々するのはわかりますけど…正直いつも柳瀬さんに溜め息をつかれる度に、私落ち込みます」
「俺はそんな風に思ってな…」
「仕方ないですけどね。私だって柳瀬さんに対してだけどもっちゃうことありますし」


百合香が柳瀬の言葉を遮ってそう言い終えると、すっきりしたのかテーブルに突っ伏して寝息を立てはじめた。

「…神野さん？」

（遠くで柳瀬さんが私を呼んでる――）

そう思ったけれど意識は遠のいて百合香が目を開けることはなかった。




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