強引な次期社長の熱烈プロポーズ
「そんな余計なほんとか嘘かもわからない話を江川くんがしたの?!」
「だけど、同期だし、信憑性はあると思うんですけど。」
「江川くんだってはっきり柳瀬くんから聞いたって言ってはないんでしょ?」
「はぁ、まあ。」


話に夢中でなかなか着替えが進まない2人はいつの間にかロッカー室に取り残されていた。



「まぁでも、それこそ柳瀬さんが私を好き、なんて一度も聞いてませんから。」

百合香はスカートを履き終えるとパタンとロッカーを閉めよりかかりながらそう漏らした。

「…あのさ。前に私が言ったこと、覚えてる?」

綾も着替え終えてロッカーを閉めた。


「『素直になって』って。」
「はい…」
「私の過去の失敗を押しつけてるって感じるかもしれないけど、でもやっぱり百合香には後悔しないで欲しいから。」


綾はいつも元気で太陽みたいに笑ってる人。
どんなに疲れてても、失敗しても、元気に振舞って、周りに元気を与える人。
だけどその綾が見たこともないような、寂しそうな表情をして百合香の腕をそっと掴んだ。


「柳瀬くんの気持ちがわからなくても、百合香の気持ちがはっきりしてるんだったら伝えるべきだと思うから。」



綾に言われて、百合香は思った。


(私のこの気持ち、もう引き返せないし、消せない―――。)

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