強引な次期社長の熱烈プロポーズ



百合香は真っ直ぐに自宅に帰った。

部屋に入るなり、いつものように寝転がる。
でも今日は、ただ仕事の疲れから寝転がっている訳ではない。
どうにもこうにも柳瀬のことが頭から離れなくなってしまっているのだ。

「夜ご飯…作る気力がないな…」

一人でそう呟いて、しばらく天井を見ているのであった。


やっと体を起してお風呂に入る。
何をしていても考えてしまうのならばいっそ寝てしまおう。
そんな結論に至った百合香は時刻はまだ夜の10時前だというのにベッドに潜り込んでしまう。


体も、心も、それなりに疲れている筈なのになかなか寝付けない。
ただ体を右に左に動かしているだけ。


その時、ベランダから物音が微かに聞こえた。

「…な、に?」

(小さな音だった。ガタッて。
もしかして、空耳かも。だってここ3階…ベランダに物も何も置いて無かった筈。)

百合香は布団をかぶって、身を縮こませた。



ガタン!



(―――空耳なんかじゃない!なにか、いる。
嘘…なに?誰??怖い!!玄関の鍵は閉めたっけ?ベランダは?
いままでこんなことなかったのに―――。)

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