強引な次期社長の熱烈プロポーズ
「昨日…私、覚えてなくて…その」
「昨日の夜のこと?」


知るのが怖いけど、自分が何をしたのか、柳瀬と何かあったのなら知りたい。そう思った百合香はコーヒーを見ながら頷いた。


「本当に覚えてないの?」
「…柳瀬さんと、お酒を飲み初めてしばらくの間は覚えてるんですけど」
「君が、俺に言ったことも?」
「私何か言ってました!?」


百合香は焦った。
酔った勢いで何を口滑らしたのかと。
酔うと本心が曝け出てしまう。それは百合香にも当てはまることだった。


「『溜め息つくと、幸せ逃げますよ』」
「えっ、そ、そんなこと?」
「あとは『柳瀬さんに溜め息吐かれると落ち込む』と」


そんなことだったんだ。と安堵と同時に逆にそんな細かな心の内までペラペラと言っていたんだ、と百合香は顔面蒼白になって更に顔を下げた。


「それを言い終えたら、神野さん寝ちゃって。タクシー拾って、車の中でも起こしたんだけど」
「すみません…」
「勝手に鞄探って鍵を開けるわけにも行かないし。前は神野さんが酔いながら鍵を出してくれてたからよかったけど。今回は…。だから俺の家に連れていった。」


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