強引な次期社長の熱烈プロポーズ
「それにしても、百合香も気をつけなきゃね」
「たまたまですよ」
「いや、まだ氷山の一角に過ぎないわ、きっと」
「大袈裟ですよ…」

百合香は久しぶりの自分の手製弁当を頬張り綾の言葉を軽く受け流す。

「でも、本当に何かあってからじゃ遅いんだから。」
「はい。でもさっき柳瀬さんも、何かあれば言ってって言ってくれましたから」
「そう!あ、そう言えば、柳瀬くんさっきそこですれ違ったけど、どこかのメーカーさんとランチ行ったみたい」
「え?」


綾はガサガサとコンビニの袋からサラダを取り出して蓋を開けながらそう言った。


(さっき…っていうことはあの女の人だ。
二人きりでランチ…?そんなこと今までの担当さんであったかな…?)


百合香は一気に気持ちが暗くなった。
そんな百合香を察して綾がフォローする。


「でもさ!江川くんみたいな人ならともかく、柳瀬くんて誘惑になんて負けないでしょ。芯が通ってるっていうか。なんかあるとは思えないよ。」
「はい…そうですね…」
「余計なこと言って、ごめん」
「いえ。後で気づくよりずっといいですから。」


百合香はお弁当が喉を通らなくなり、蓋を閉めた。
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