強引な次期社長の熱烈プロポーズ
午後からも、柳瀬は事務所に缶詰だった。
百合香にとっては好都合だったのだが。柳瀬の姿も、誰かと一緒の姿も見なくて済むのだ、と。

そして、何事もなく時間が過ぎて閉店の時間になった。
長谷川と湯川はアルバイトの為、清掃を軽くすると先に上がっていった。

百合香はレジを閉め、日報を打ち込む。
パソコンに向かっていたら半日振りに柳瀬が戻ってきた。


「お疲れ様」
「お疲れ様です」
「今日はありがとな」
「いえ、特に問題ありませんでしたから」


百合香はパソコンの画面から目を逸らさずに答えた。
柳瀬は今から発注書を作成するようで、自分の担当メーカーの商品を見て回っている。
百合香がまだパソコンに向かっているのを見て、柳瀬が言った。

「終わったら、先に上がっていいよ」

いつもなら夕礼という名の今日の報告、反省、明日の予定など申し送りのようなものをするのだが、今日は柳瀬が最後まで忙しいようでなしになるみたいだ。

「はい。わかりました」

ひとつそう返事をして百合香はまた手を動かした。

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