キミの隣り



いつもより早く家を出たけれど
教室にはほんとんどの人が揃っていた


「咲妃ー! 一緒に写真撮ろ!」


「いーよ」


私の周りをたくさんのクラスメートが囲む


「シャッターお願い!」


「おっけー じゃ撮るよ? はいチーズ」



カシャ
眩しい光りが私達を包み込んだ



「はい、どーぞ」


「ありがとう♪」



返って来たカメラをみんなで囲む


その中に映る私は



あまり



幸せそうな顔ではなくて



別れを惜しむような



悲しい表情をした自分がいた



「咲妃ー あたしとも撮って?」


「あ、うん」



休憩をする暇もなく


私はたくさんの友達と写真を撮っていった。




30分ぐらい経った頃


私達の写真大会はヒートアップしていった


いつもはしない変顔をしたり


たくさんの友達と抱き合いながら撮ったり


気付けば私は笑っていた



でも、心の中は



キミを想って泣いていた



そんな時、急に教室の扉が勢いよく開いた


いつもはGパンにTシャツという
ラフな格好なのに



今日はスーツをビシッと着ていて



なんだかいつもと違って



本当に最後なんだと思い知らされた



「おい、廊下に出ろ!
もうすぐ式が始まるぞー」


担任の先生の言葉を合図に写真大会は
一度終わりみんな廊下に並び始めた


全員が並び終わったのを確認した後


先生は私達に語りかけるように言った



「今日で高校生も終わりだな。
悔いのない素敵な1日を過ごせよ」



先生の一言に泣きそうになった



「返事は?」


「はい」



全員の声が揃った




本当に最後なんだ





一歩一歩、




前を進む





扉の向こうには





たくさんの先生




大好きな後輩




頼りになる両親





みんなが私達を待っていた





赤い絨毯が私達を席まで歓迎してくれた





ちらっと隣りを見ると





いつもとは違う







真剣な顔をしたキミが






席に座っていた






今日はもう








キミの隣りには座れない





< 10 / 15 >

この作品をシェア

pagetop