キミの隣り
「答辞。
僕はこの高校でたくさんのことを学び…
やっぱり台本通り読むのは止めます。
今、俺が想っていることをそのままみんなに伝えたいと思います。」
一瞬で周りがざわつき始めた
けど、キミはそれを無視して
かわりに私の方を真っ直ぐ見た
「まず、初めに咲妃」
え?
一体、何?
ビックリして体が固まってしまった
けれどキミは私の大好きな
あの笑顔を見せながら
マイクを通して話し始めた
「まず始めに、咲妃ありがとう。
お前みたいな素直じゃない女、初めて出逢ったよ。本当に、毎日毎日アホみたいに
言い合って先生に怒られたよな。
でも、そんな咲妃と過ごす毎日はたまらなく幸せで楽しかった。
俺、咲妃が好きだ。すっげー好き
世界で一番、咲妃が好き。
咲妃、咲妃さえよければ
ずっとずっと、俺の隣りにいて?
俺、咲妃がいないともう生きていけないわ」
キミはそう言って恥ずかしそうに笑った
キミは私に
世界で一番、幸せな言葉をくれた
涙が溢れて
止まらなくて
キミに返事も出来ないぐらい
涙は止まってくれなかった
「また、後で返事は下さい。次、バスケ部」
私が返事出来ないとわかったキミは
次々とお世話になった人達に
お礼の言葉を伝えていく
気付けばみんな泣いていた
同級生も
後輩も
親も
先生も
みんなキミが言った言葉に感動して
涙を流していた
キミは人を感動させる天才だね
「以上で答辞を終わります」
キミの一言で
体育館は溢れんばかりの拍手に包まれた
壇上の上から降りてくるキミ
キミを見ていると不意に目が合い
恥ずかしくて
ぎこちなく笑うと
キミは今までにないぐらい
優しい笑顔で
私を見てくれた。
あんな大勢の前で
私に幸せな言葉をくれたキミへ
私も精一杯
この式が終わったあと
キミにこの想いを
伝えたいと思います